東京高等裁判所 昭和44年(ラ)397号 決定
記録によれば、抗告人は被相続人亡小島喜美太郎の先妻亡あきの実子であり、みぎ喜美太郎の養子であること、喜美太郎は後妻すい子との間に実子喜久雄および美佐子があること、更に喜美太郎は、後妻すい子の実子節子(のちに福嶋康光との婚姻により福島姓となる)を養子とする縁組をした旨の戸籍の登載があること、喜美太郎は、その所有にかかる原決定末尾添付別紙物件目録記載の財産(以下「本件遺産」という。)をみぎすい子、喜久雄及び美佐子の三名に遺贈する旨の記載ある遺言公正証書が存在すること、抗告人はすい子については民法第八九一条第五号所定の相続欠格事由の存在を主張し、かつ福島節子については、真実喜美太郎の養子ではないことを主張し、その上で本件遺産を喜久雄、美佐子及び抗告人の三名間に分割すべき審判を求めて本件申立に及んだことが明らかである。
そもそも遺産分割の審判に関し、その前提問題たる相続人の地位につき争いある場合に家庭裁判所がいかなる措置をとるべきかについては、争いの存するところであるけれども、遺産分割の審判に必要な限度で家庭裁判所が、前提問題の判断をすることは何ら差し支えないと考える(最高裁判所昭和四一年三月二日大法廷決定、民集二〇巻三号三六〇頁)。家庭裁判所の右判断に対しては、別訴で争うことも可能であるが(前掲最高裁決定)、だからといつて家庭裁判所が一切右判断をしないで遺産分割の審判申立を却下することは、遺産分割の審判申立が前提問題の争いを含む蓋然性の高さにてらし、申立てがあるのに裁判を拒むに等しいきらいがないではない。してみれば前提問題についてなんら審理することなく、本件申立を不適法として却下した原決定は違法であり、取り消しを免れず本件抗告は理由がある。
(近藤 田嶋 稲田)